好きな場所で新しい暮らし1

好きな場所で新しい暮らし1

丹波篠山の自然の恩恵を受けた自身の作品とお客様とが通じあえる場所にと、草木染めと竹かごのお店“けせら工房“を開業。「衣・食・住」を自分たちで手作りしたいという思いが活動の根底にあり、こだわりの原材料や道具から生まれる作品が多くの訪れる人を魅了しています。

 

本当にやりたいこと

大阪の音大卒業後“自分のやりたいこと”は一体何かをぼんやり考えていた時に、働いていた飲食店での素敵な人たちとの出会いが今の活動の原点かもしれません。そのお店で働く人たちは、ミュージシャン、イラストレーター、革細工作家などのバイト社員、絵を描き個展を開いたりするオーナー、お茶博士と呼ばれる社員さんなど、とにかく個性の塊みたいな人たちが自分を自由に表現しながら働いていました。そんな場所で働くうちに私は将来のことを自問自答するようになり、幼い頃からの自給自足という夢を思い出し、環境問題や自然農法を学び始めました。

 

理想と厳しい現実

「農」に興味を持った頃に夫と出会い、一緒に奈良県の「赤目自然農塾」で自然農を学びました。その後、大阪の田舎で「けせら畑・工房」を開業し新しい生活を始め、農業を軸に抱っこ紐などを作って販売し、子育てをしていました。ですが草を刈らずに育てる農法は理解されず、収入も安定せず生活はとても苦しかったです。そこで自身の活動を知ってもらい、新たな収入源に繋げたいと考え、綿の種まきから収穫、糸を紡いで染め付け、布を織るところまでのワークショップを始めました。子どもさんに一枚の布ができあがるまでを見せたいと多くの方が参加してくれるようになりました。野菜の端境期の収入源としても始めた活動でしたが、ある時、参加者さんの「安すぎる」という声からきちんと計算すると、利益率は20%ほどでした。ただただ楽しく思いを伝えるだけでは続けることができないと悩んだ時期でした。

 

 

根を下ろした生活

子どもの通うスクールが丹波篠山にあったことが大きく影響して、知人の紹介で丹波篠山での生活をスタートさせました。この地域には移住に対する理解があり、移住者のコミュニティーもしっかりあります。一風変わった子育てや活動も温かく見守ってくださり、私たちの活動で得た利益を自然環境も含め、人や地域などに繋がるすべてにプラスになるように経営を考えることが継続可能で心地よい生き方だと思うようになりました。移住をきっかけに夫は農業から造園業へ、私は「けせら工房」を開業することができて経済基盤も少しずつ安定してきました。これからは丹波篠山という土地にしっかりと根を下ろして、この地域の良さをたくさんの人に知っていただきたいなと思っています。

 

 

自分の役割

マルシェで知り合った作家さんから、市販の布や糸を買っていたけど、草木染めのもので作りたいとリクエストをいただき、そこから草木染めの糸や布の販売を始めました。私の染めたものが、作家さんに渡ることで特色のある作品になり、そこから色々な人に広まるのを感じ、すごく嬉しかったです。私は作家になりたいのではなく「自分の納得のいく草木染めをする」ことが好きで、縁の下の力持ちとして作家さんたちに納得して使ってもらえるものを作るということが性に合っているのだと感じました。環境の変化も相まって自然の大切さなど、私の草木染めを通じて伝えたいことが徐々に広まっていることを感じています。これからは丹波篠山に「染色の森」を作るプロジェクトも始まります。クラウドファンディングを利用したり、またネットでも私たちの暮らしや活動を発信して広めていきたいと思います。

 

 

 

都市との関わり

うちで作る竹かごの材料は、近くの竹やぶの整備をして集めています。最近では山林の資源はあまり活用されなくなり、山に入る人も少なく人手がいる作業ですが、都市部で生活されている方のほうが「環境問題に関心」が高いので多く参加してくださいます。また夫も尼崎市で畑をする人たちの講師に出向いていますが、都市部での耕作面積には限りがあるので、丹波篠山でも活動を広げようとしています。今後は様々な活動を通して“都会の方が考えることや求めるもの”と“地方の方が求めるものや想い”が通じ合えて両方によい関係が続いて行けるようになればと思います。

 

人生の先輩から学ぶ

うちで作る竹かごの材料は、近くの竹やぶの整備をして集めています。最近では山林の資源はあまり活用されなくなり、山に入る人も少なく人手がいる作業ですが、都市部で生活されている方のほうが「環境問題に関心」が高いので多く参加してくださいます。また夫も尼崎市で畑をする人たちの講師に出向いていますが、都市部での耕作面積には限りがあるので、丹波篠山でも活動を広げようとしています。今後は様々な活動を通して“都会の方が考えることや求めるもの”と“地方の方が求めるものや想い”が通じ合えて両方によい関係が続いて行けるようになればと思います。

 

 

環境問題を入り口に、手作りの衣食住を目標に生活を送られている松岡さん。
都市部に住んでいた頃に感じたことが現在の仕事と生活に大きく影響しています。また地域の皆さんとの繋がりから感じた“地域の思い”にも共感されています。両者の思いを理解しながら“地方と都市部の人と人とを緩やかに繋ぐ”役割を実践されています。幾度となく失敗されたからこその「自分らしい移住スタイル」の確立。これからも、皆さんとの信頼関係を糧に邁進されると思います。