農業はじめの一歩28

農業はじめの一歩28

合同会社よしだ農園 吉田 啓記(よしだ ひろき)さん

丹波篠山市有居

経営品目:黒大豆

経営面積:80a

Instagram:https://www.instagram.com/yasai_tamba/?hl=ja

 

〜初めて食べた黒枝豆に魅了され始めた新規就農黒大豆農家〜

 

——丹波市で生まれて高校から阪神間で生活をされていた吉田さん。アパレル通販事業や流通業界での仕事を経て、自身の通販サイト事業を展開された吉田さんが農家としてやっていこうと思われ、多くの壁にも負けずに就農されたのにはご自身の考え方の根本である「行動力」にありました。——

 

 

 

 

「丹波篠山の黒大豆・黒枝豆をもっと広めていきたい!」

令和64月に新規就農者として認定をいただきました。自身で通販事業をしており、縁あって丹波篠山市の黒枝豆を通販サイトで販売したところ、お客様に大変好評で想像以上の売れ行きになりこれだけ需要があるものかと実感しました。

しかし、通販サイトを作成している中で実際に黒枝豆を作ったこともなく、美味しさを伝えようにもその過程が理解できていないとお客様に完全にはその魅力を伝えきれないという壁にぶち当たりました。それなら自身で作ってみよう!と思いました。丹波篠山の黒枝豆の美味しさをもっとたくさんの人に知ってもらいたいと思ったことが新規就農のきっかけです。

 

「新規就農者になるための壁」

新規就農を目指した道のりは決して平坦なものではありませんでした。地元出身者ではないため借りられる農地がすぐには見つからず、黒枝豆栽培に必要な土地の確保に苦労しました。

しかし、株式会社赤井農産の赤井社長との出会いが私の状況を一変させました。

社長は私の熱意に共感し全面的なサポートを約束してくれたのです。栽培方法や肥料・農薬の知識はもちろん、農業の将来についても多くのことを教えていただき無事に新規農業者として認定されました。

この経験から新規就農には、時間、労力、信頼、そして周囲のサポートという4つの要素が不可欠だと痛感しました。特に高齢化が進む農業の世界において、若者がスムーズに参入できるよう制度や環境の整備が必要だと感じました。

農業は魅力的な職業ですが、特に市外出身者が新規就農を目指す中ではさまざまな壁が存在します。これらの壁を取り除き、安心して農業に取り組めるような環境づくりが日本の農業の未来を築く上では非常に重要だと思います。私自身も苦労の末、認定新規就農者になった経験を活かしてこれからは新規就農を目指す方のサポートができればと思います。

 

 

 

 

「勉強と作業の日々」

就農1年目は作業に慣れないこともあり本当に大変でした。今では如何に効率よく、楽に作業を進めていくかを考えています。その甲斐あってか要領よく作業をこなせるようになってきました。知らない事を調べていく楽しさを感じながら日々、土づくりや肥料について勉強しています。何も知らないことほど怖いものはありません。赤井社長にも相談したりしながら勉強と実践を並行させて日々努力しています。

その中でも、減農薬栽培はなんとかできても無農薬栽培というのは大変難しいです。美味しいからこそ虫がつきますが良い虫もいればそうでない虫もいます。消費者に虫のついたものをお届けすることはできません。いろいろ試行錯誤しながらできる限り減農薬で美味しい作物ができるように頑張っています。

 

「通販業界での経験を活かした新規就農への挑戦」

私は生産した黒枝豆や黒大豆をネット販売していますが、通販業界は競争が激しく、ただ商品を出せば売れるというものではありません。商品の魅力を伝えるための美しいページ作りや顧客とのコミュニケーションなど、様々な要素が求められます。

私はそういった知識を独学で深めてデザインから販売までを一貫して行ってきました。この経験は農業の販路拡大にも大きく貢献しています。例えば、商品の魅力を伝えるための商品ページの作成やお客様からの問い合わせ対応などには長年培ったスキルがそのまま活かされています。

その結果、全国各地のお客様に丹波篠山の黒枝豆や黒大豆をお届けできるまでに成長しました。お客様に直接販売し丹波篠山の魅力を知ってもらうことで農業の活性化にも貢献できると思っています。認定新規就農者になるための審査会でも就農前から販路を確立している点が非常に珍しいケースとして評価していただきました。

今後は、阪神間での販路開拓も視野に入れてさらに事業を拡大していく予定です。通販業界と農業という一見すると異なる分野を結びつけることで新たな可能性を切り開き、新しいビジネスモデルを確立して地域に根ざした持続可能な農業を目指していきます。

 

 

 

 

「地域のお役にたつために」

畑で農作業をしていると近隣の地域のみなさんから「今日も頑張っとってやな!」と声をかけていただきます。気にかけてもらえることは嬉しいことですし、私自身も地域の皆さんにいろいろなことを教えてもらいながら少しずつ認めていただけるよう日々、頑張らなくてはと感じています。

地域の高齢化が進む中、日々の農作業の負担をなんとか軽減できないものかと思いドローンでの農薬散布をしています。今は小規模ですが今後は拡大する予定です。地域のみなさんの畑を手伝えるようになれば少しでもお役に立てるのではないかと思っています。
 ほ場のある大芋地区の藤坂という地域は、本当に住民のみなさんが穏やかでいい場所です。獣害には悩まされますが温かい人情があります。少しでも皆さんのお役に立てるよう、日々頑張っていきたいと思います。

 

 

 

 

——とにかく行動力と考察力のある吉田さん。経営者としての感覚もしっかりとお持ちで、販路を確立されてからの新規就農は異例のスタートだといえます。地域にも貢献したいというお考えの吉田さんは、ご家族に支えられながら美味しいものを届けるための努力を惜しまれません。この丹波篠山の特産品を受け継いでいくために農地の確保や地域とのつながりなど新規就農を目指す上での多様なサポートがこれから必要になるともお話して下さいました。——

 

2024年9月6日