株式会社アグリヘルシーファーム 原 智宏(はら ともひろ)さん
丹波篠山市味間奥
経営品目:水稲・黒大豆・デカンショ豆
経営面積:90ha
Instagram:https://www.instagram.com/agrihealthyfarm/
〜耕畜連携を実践し、食のバックボーンである農業を貫く〜
—— 家族経営から法人化し大規模農家として90haもの農地を耕作されています。
機械投資を行い、事業としての農業を確立しつつ農業の根本的なあり方を追い求めて日々意欲的に活動されています。——
「先代から受け継ぎ、法人化の道へ」
初めは、父が代表としてお茶も含めて10haの農地を家族経営していました。私は大学卒業後、直ぐに父のもとに戻り自分が農業に取り組むからには法人化に向けて動いて欲しいと希望を伝えました。現在は社員やWワーク、アルバイトの方々の力を借りて役員含めて10名で日々頑張っています。
機械化を進めること、コスト削減への努力は怠りません。同じ機械でも小規模農家と大規模農家では使用頻度や経営面積から費用対効果の面で大きく差が出てくるため、機械化を進めることは大規模農家ならではのメリットがあります。畜産業界が小規模から大規模に移行していったように、農業の世界も大規模化を進めていかなくてはいけない時代になってきています。
世界で4億8千万tも生産されているお米ですが、日本ではそのうちの800万tしか生産されていません。この生産量の中でも日本での消費量は減り、海外へ輸出されていることはどうなのかと思っています。大きなビジョンでお米の生産を考えていく時期に差し掛かっています。大規模農家としての役割を担うためにも法人化は必要不可欠でした。
「耕畜連携を深める」
先代の頃から近隣にある兵庫田中畜産株式会社(以下「田中畜産」)の堆肥をうちで発酵させて耕作していました。田中畜産さんは抗生物質を含む餌を食べさせない方法で安全な牛づくりに取り組んでおられます。その堆肥を使って耕作することはうちにもメリットがあると思い平成19年に大きな堆肥施設を建てました。連携することで田中畜産さんも堆肥の処理に困らない、うちももみ殻の処理に困ることがない、長年に渡ってお互いに信頼関係の構築ができました。
うちの耕作面積がそれまでの面積から3倍に大きくなり、田中畜産さんも新畜舎を建設され規模拡大をされると転機を迎えました。面積を拡大していく中で作期分散は絶対に必要なので、WCS稲(稲の穂と茎葉をまるごと刈り取ってロール状に成型したものをフィルムでラッピングして乳酸発酵させた牛の飼料)を作りたいと思っていました。田中畜産さんに相談したところ、牛を繁殖から育成する中で藁が大量にいるため引き取ってくださることになりました。牛の餌は現状、海外産に多く依存していますが国産の藁、それもうちの安全な藁を食べて育った牛が有利販売につながるとのことでお互いにメリットのある関係が更に深まりました。お互いのためになることはどんどん取り入れていきます。
「土づくりへのこだわり」
当初は有機栽培に興味はありませんでしたが、農業を突き詰めていくと常に土づくりを優先で考えることが大切になるため結局は有機栽培にたどり着きました。
水稲栽培をした翌年、黒豆を栽培する畑には堆肥を分解させるようにして土の温度が高い間に堆肥を鋤き込んでいきます。春先にしっかりと分解しバランスの取れた状態に持っていくことが大切です。
さらに、堆肥の効果が出るまでには時間がかかります。今年土壌に入れた堆肥が来年すぐに効果が出てくるわけではないので窒素分も加味して考えています。水稲の苗もできるだけ太くて大きい苗を作ることを意識して、田んぼに入れてからも窒素を吸わないようにオリジナルの肥料設計をしています。
「新しい取り組みもまた楽しい」
新しくお米の炊飯事業を立ち上げました。店舗を構えて事業をする方がカッコいいのかもしれませんがテナント料など経費の面も気になります。ロスが出ることが一番嫌なので、サブスク方式(定額料金を支払うことで一定期間商品やサービスを利用できるビジネスモデル)を活用し、あらかじめ必要な分をご予約いただいて契約者様にお届けしています。
この事業を大きくして農家が取り組む新たなビジネスモデルを確立していきたいです。農業で取り組んでいくことだけではなく、その美味しさの価値を広げていくことが両立できればと思っています。
「安心安全なお米を食べていただくために」
畜産部門において卵は国産100%と言われています。しかし、国産の餌を100%使って生産された卵は4%にしか満たないのです。他の畜産業界においても餌自体はほぼ海外のものに頼っており、大豆や穀類も遺伝子組換えのものを使用している状況です。遺伝子組換えが悪いのかそうでないのかというところは難しいですが、敏感になっておられる消費者も少なくありません。そのような中で私たちは畜産農家と連携しながらお米や豆、飼料用のお米を作っています。
私としては、食べ物を単にサプリのように摂取するのではなく身体づくりという観点からも将来の人間形成において農業が重要であることを感じていただきたいです。そのために、ちゃんと農業の将来を見据えて農業を応援していただけるように消費者の皆さんに訴えかけていきたいです。
安心・安全である“食”に対して都市部の方は特に敏感になっておられます。国内の認識も少しずつ変化している中ではありますが、もっと多くの皆さんにご理解いただけるよう日々考えながら農業と向き合っています。
——農業を始めた当初は有機栽培に興味はなかったとお話される原さん。突き詰めていく探究心と農業全体を俯瞰で捉える農業経営者としての経験から今の農業のあり方へとたどり着かれました。
丹波篠山市で農業を目指そうとされている方へのメッセージとして「相談窓口の役割も果たしていきたい。楽な道ではないですが安心して来て下さい。」と丹波篠山市の農業の担い手の育成についても熱く語って下さいました。——
2024年8月26日