農業はじめの一歩25

農業はじめの一歩25

農九ファーム 土谷 学(つちや まなぶ)さん

丹波篠山市殿町

経営品目:水稲・黒大豆・メロン

経営面積:5.3ha

 

〜「農業は楽しい!」その一言につきます!〜

 

——環境や生きものに配慮したお米づくりに取り組み、耕作面積の殆どがお米の土谷さん。現在も有機栽培の勉強をしながら、自身が作ったお米を食べてくださる人に思いを馳せて、日々頑張っておられます。——

 

 

 

 

「減農薬・化学肥料不使用が“当たり前”から入った農業の世界」

高校卒業後、30歳まではサラリーマンをしながら休日に父の農業を手伝っていました。30歳のときに父が亡くなり、農家を継いだときは経営面積は3haくらいでした。今思えば、もう少し早くから農業に関わっておけばよかったと思っています。

当初は、僕自身の“当たり前だった「減農薬・化学肥料不使用」という方法で農業の世界に入りました。現在は有機栽培をしていて除草剤も使っていません。丹波篠山市が進める化学肥料や農薬を低減した生きものにもやさしいお米づくりは、4haの田んぼで取り組んでいます。獣害の多いエリアなので苦労もありますが、毎年田んぼにコウノトリが飛来してきてくれるのを見ることが農作業の中で楽しみとなっています。

 

「土の持つ力を最大限に利用したい」

土壌の中には生育に好影響な微生物もいれば悪影響を及ぼす微生物もいます。微生物のバランスをいかに良い状態に持っていくか、日々勉強を続けています。土壌と微生物のバランスは深く突き詰めれば突き詰めるほど面白いですが、それを実践し結果を出すことは非常に難しいです。だから農業は面白いし、道理と摂理を学べます。土壌の持つ力を良い状態に持っていくことが美味しく安心して召し上がっていただくことに繋がっていきます。

 

 

 

 

「緑肥がもたらす効果」

農作業をしているとイナゴが草むらから飛んでいくことがあります。虫も生き抜く為に草を食べているのだと思いますが、本来なら稲の方が美味しいだろうになぜ雑草が生える草むらから出てくるのかと不思議に思うことがあります。

最近は、イナゴにも興味をもってもらえるような稲を作るため肥料に緑肥を使っています。周辺に生えている草も肥料にできないかと考えていて、今一番いい効果が期待できそうだと思っているのは「カラスノエンドウ」です。黒豆も検討しましたが、あれだけしっかりとした枝があると裁断・鋤き込みが現実的には難しいと感じて断念しました。

ヘアリーベッチという緑肥を肥料に使っていますが、窒素量が多いと稲が倒れてきてしまうので施用量を考えることが難しいです。日々、いろいろと試行錯誤していることが味にもどう影響するのか、考え出すとキリがないですしそこが面白い。

 

「米づくりに尽力したい」

米づくりに関しては現在も研究の途中で、確信を得たものはありませんがとにかくこれからも突き詰めていきたいです。

農業は7代先を見据えると言われます。私の栽培方法で育ったお米を食べてもらうことで人の身体はどのように変わっていくのか。7代先という大変長い時間がかかるのでその結果は僕が生きている間にはわからないと思います。それでも、僕自身がいいと思った農業、米づくりが遺伝子レベルで人の身体に将来的にいい影響を及ぼすと信じています。

また最近では、有機栽培が注目される中で安心安全な作物を求めて食に敏感な消費者が増えてきています。農業が人の身体づくり、将来にとって重要であることを多くの方に知ってもらえたら嬉しいです。

 

 

 

 

「思いを繋げる農業を」

これからは後継者の育成についても取り組んでいきたいです。後継者には、僕の今の取り組みを引き継いで今後の農業経営を考えていく参考にしてもらえたら嬉しいです。

僕が一から始めたことがスタート地点としたら、後継者の方にはその技術を引き継いで農業を始めてもらえますし、僕の思いが伝われば知識や選択肢も広がります。僕自身も目指している農業のあり方へは決して楽をしていてはたどり着くことはできませんが、後継者が僕の技術や知識を「役に立つ」と思ってくれれば僕も頑張れます。

農業は本当に楽しいです。どんな仕事にも負けない、得難い魅力があります。何ヶ月も先の天候も気にしますし、農業をする上で様々な出会いがありそこでお話する方々の人柄も見えてきます。普段の農作業の中での何気ない会話からもいろいろな情勢や世間の様子も見えてきます。そういった栽培や技術以外の思いも一緒に伝えていければ僕も楽しい。

 

 

 

 

——現在は、獣害対策のことも考えてハウスでレノンメロン等の栽培も始められた土谷さん。日々様々なことを勉強し、吸収されて実践されています。食べてくださる方々のことを思い安全であることはもちろん、美味しい作物を提供し続けていきたいと熱心に語ってくださいました。思いを「伝えていく」大切さを胸に、自然と共存できる農業を追い求めていらっしゃいます。——

 

2024年8月20日