酒井農園
酒井 良昌(さかい よしまさ)さん・丈拓(ともひろ)さん
現住所:〒669-2453 兵庫県丹波篠山市谷山618
経営品目:水稲(コシヒカリ)・黒枝豆・黒大豆
経営面積:9.2ha
〜とにかく楽しく!次の世代に向けての「紡(つむ)ぎ」を目指して〜
—— 親子3 代で農業に取り組んでおられる酒井農園。作業効率を上げるために機械化を進める一方、地域と共に助け合う気持ちを大切にされ、脈々と引き継がれている「農業への思い」は、常に前向きです!——
「両親の背中が教えてくれたこと」(酒井良昌さん)
農地を守っていくために、退職後に農業をしようと考えていました。親が高齢になり、息子が百姓を知らないなんておかしいでしょ(笑)。単純にそう思えたのは、兼業農家として農業をしている両親が、愚痴を言うことなく楽しそうに働いている姿を小さい頃より見て育ったからだと思います。10年前に専業農家となり、農地も9haの広さを耕作するようになりました。順調に進む中で、自身も後継者のことを考えるようになってきました。一番下の息子丈拓が、数年前から「後を継ぐ」のは自分だと感じてくれ、今年から本格的に一緒に農業をしています。本当にありがたいことです。
「次の世代に残すためにできることから」(酒井良昌さん)
今でも草刈りや黒枝豆の販売など、両親も頑張ってくれています。引き継いだ田や畑での作業は私の仕事です。広さもありますので、農業機械がないとできません。数年後にはこんな機械が欲しいなど投資計画をし、少しずつ新しい機械を揃えてきました。できる限り作業効率を上げることで、良いものを作ることに目を向け手間をかけることができます。毎年土壌改良に取り組み、黒枝豆の味の向上に取り組んできました。お客様に「去年美味しかったから、また来たよ!」と言われると、努力の甲斐があったと喜びもひとしおです。
昔とは違う「生業としての農業」の道を見出すことで、若い世代に「農業をしよう!」と思ってもらいたいと感じるようになりました。何より「自分で考えて取り組む楽しさを知ってもらうこと」が一番伝え残したいことかもしれません。
「酒井農園をなくしたくない!」(酒井丈拓さん)
高校卒業後は、地元に就職してサラリーマンをしていました。農地が増えるという話を聞いていたので、今年から仕事を辞めて、本格的に農業を始めました。もちろん妻に「百姓してもいいか?」と聞いてからですけど(笑)。父がいつも楽しそうに一所懸命取り組んでいる「酒井農園をなくしたくない!」という思いは強かったです。農作業の一連の流れは年1回しかできないので、技量を身につけるために早く覚えていきたいと考えました。
実際に始めると、自分のやったことが目に見えてわかるので「やりがい」を感じられますし、本当に楽しいですね。時間の使い方も自分で計画できるので、子供と遊ぶ時間も随分増えました。
「会話は掌中の珠」(酒井丈拓さん)
そうはいってもまだ1年目です。父の指導のもとに修行中です。日々の作業の流れはもちろん、コツを覚えていきながら黒枝豆の収穫時期を迎えようとしています。短い期間ですが、父が地域の皆さんとの会話の中から情報を収集し、時には地域を超えたお付き合いをしている姿を目にしました。何気ない雑談から信頼関係を作っていったり、営業の話になったりします。今までは、「ようしゃべるな〜」と見ていたことが、中に入ると非常に重要なことなのだと理解できました。地域の皆さんと支え合い、協力し合える仲間を大切にしている父をとても尊敬しています。
「楽しく頑張らないと!」(酒井良昌さん)
専業農家になって、今まで以上に地域の皆さんとの繋がりも深くなりました。面積が広くなった分、周囲から「手伝ったんど!」と声をかけていただいたり、新しく農業を始めた方とも協力できるようにしています。「繁忙期が落ち着いたら飲もうか!」と楽しみを作ったりして(笑)。農業って本当に面白いんですよ。ただ、昨今の天候事情により作業の遅れることが、唯一の心配事です。黒大豆と水稲の耕作面積の比率調整をし、農作業工程を書き留めるなど、今後の助けになることはできる限りしています。
3年後には、丈拓に譲ろうと思っています。区切りをつけることも重要だと思います。
「とにかく一歩ずつ」(酒井丈拓さん)
今は、父が築いてくれた農業を同じようにできることが目標です。体力仕事も多いので、機械化を進めていければいいなとも考えています。仲間作りはまだまだこれからです。地域の皆さんに頑張っているなと思ってもらえるよう耕作していきたいです。
これから先、長く取り組んでいくことなので、着実に前に進んでいけるよう頑張っていきます!
—— 常に前向きで笑顔の絶えない良昌さん。3世代で地域農業を牽引する姿、家族・地域・仲間を思いやる気持ちは「愛」に溢れていました。そのお気持ちを肌で感じておられる丈拓さん。父への「感謝」の思いを胸に、助け合う気持ちを受け継がれる。お二人の関係は、本当に農業の「紡ぎ」のように映ります。——
(2022年10月)