ふみちゃん農園 大西 冨美子(おおにし ふみこ)さん
現住所:〒669-2312 兵庫県丹波篠山市菅111-34
経営品目:水稲・黒豆・黒枝豆
経営面積:2.5ha
〜「農業」を通じて丹波篠山の魅力を発信し続ける〜
「ふみちゃん農園」では、週末にはボランティアの皆さんを迎えて、大西冨美子さんの元気な声が響き渡ります。本格的に農業に取り組まれて約20年。現在では、丹波篠山市農業委員会の委員や菅生産組合の会長も務められており、女性農業者のリーダーとして活躍中。そんな彼女の農業に対する思いは、非常にアグレッシブ!大西さんを突き動かす原動力はどこにあるのでしょうか。
「丹波篠山の農業を守る心」
小さい頃から手伝っていた農業ですが、父に叱られることも多く「田んぼなんてなかったらええのに」と思っていました。ある時、生ゴミが肥料になるという方法を知って、実践してみたいと思うようになりました。そこで農業に目覚めるスイッチが入り、さらに本格的に学ぼうと「黒豆学校」に通い始めました。当時、講師をされていた黒豆農家の方が、「何をしたら良いかわからへん時は、朝早ように畑や田んぼに行って立ってみいな。豆(作物)が教えてくれる。」とおっしゃったことに感銘を受けました。本当にその通りで、今も先ず朝起きたら田んぼや畑を眺めています。経験を積んでいく中でも「農業に向かい合う謙虚な姿勢を大切にすること」だと胸に留めています。
長く続けていても、農業は気候や土の状況など毎年違う影響を受けます。その時の作物の状況や作業の内容、使った経費を日記のように書き留めることで、適切な管理ができるだけでなく、自分の技量も上がります。先人たちの教えは、「魅力ある丹波篠山」を守ることの大切さを伝えてくれているのだと強く思います。
「楽しむからこそ輪が広がる」
10年前にテレビの取材を受けたことをきっかけに、黒枝豆を畑で収穫してもらおうと思い、そこに「農作業を手伝いたい」とおっしゃる方もあって、農業ボランティアさんの受け入れを始めました。京阪神にお住まいの方々が、約15名集まっています。農作業をする人、子どもたちと遊ぶ人、みんなの食事の用意をしてくださる人。大勢でするので作業もはかどり、食事の時間をゆったりとって会話が弾みます。皆さんと一緒に過ごす時間が楽しくて楽しくて。都会で日々の生活に追われる中、癒やしを求めて参加してくださっている。大変な農作業をしてでも「丹波篠山の黒豆」が食べたい!という皆さんの気持ちが何より嬉しい限りです。
ボランティアの皆さんが畑で一生懸命作業をしている姿を地域の方もよく見てくれています。「うちの畑もお世話になれないか」とお話が次々あり、始めた頃の2倍の農地を手がけさせていただくようになりました。中には、少し離れた場所の農地も預かっています。その地域でもコミュニケーションが広がり、繋がりが生まれます。家からは遠くてしんどいけれど、得られるものが沢山あります。つらいと嘆くより出来ることをやる、命ある限りさせていただくことが幸せだし、土に触れる生活のおかげで、心身共に健康でいられるのだと感じています。
「感謝の気持ちを未来へ繋げる」
今は、農家に生まれたことにとても感謝しています。「農業」を通じて、色々な方と関わることができます。「人とも会話する」「食物とも会話する」、楽しみと有り難さを実感しています。次の目標は、その喜びを次の方へ引き継ぐこと。ある時、農業がやってみたいと家族が来られた際、畑の黒豆の葉を落とす「葉とり」の時期だったから、「やってみる?」と作業の仕方を教えました。中腰の作業で、一畝をするのも大変。音をあげられるのではないかと思っていたら、黙々とこちらの言ったとおりに最後までやりきられました。「やろう」という気持ちがあれば出来るんだなと感心しました。今は自分で一から黒豆を作ってみたいと頑張っておられます。
「農業」は自分の代で終わらせるものではありません。家族が引き継ぐことが難しいこともあるでしょう。それなら一生懸命に頑張ろうと思う方が、家族や友達と一緒にやってくれたら良いのではないかなと思います。私達が先人から引き継ぎ、その恩恵を受けたことへの感謝の気持ちがあるからこそ、次の世代へ引き継いでいかなくてはならないと思うのです。そしてその思いを繋げる志のある方へバトンを渡していければ、丹波篠山の魅力が途絶えることはないと思います。
広い農地を耕作するにも、一人ではできません。家族、ボランティアの皆さん、周りの方々の助けがあるからやっていけます。そんな皆さんとの繋がりに恵まれているからこそ、パワーをもらって自分も頑張っていけるのだと思います。
丹波篠山の農業の伝統を重んじていらっしゃるからこそ、今の時代にあった都市部との交流に取り組まれている大西さん。そのパワフルで元気な姿に魅了されて、素敵な人たちがふみちゃん農園に集まって来るのだと感じました。ご自慢の畑で、今日も楽しみながら、黒豆たちと笑顔で会話されています。
(2021年10月)