Classo2017教育特集・vol.3 最先端でグローバルな、新しい教育のかたち。「日本の田舎はディズニーランド」

Classo2017教育特集・vol.3 最先端でグローバルな、新しい教育のかたち。「日本の田舎はディズニーランド」

インターナショナルデモクラティックスクール??

子どもたちには自由でのびのびと、自分の好きなことや得意な力を伸ばしてほしい。ゆったりとした時間の中で、過度にストレスをかけたり決められたことをやるだけではなく、子どもらしく、また人間らしい自由で独創的な発想で考える力を伸ばしたいと考える方もおられるかもしれません。

篠山で2016年の4月にオープンした一風変わったスクールがあります。篠山市内で英会話スクールを経営する西村源さんは、篠山で育った経験から、次世代の子どもたちへの新しい「選択肢」として、テストもなく、カリキュラムも全くない、独自のスクール「インターナショナルデモクラティックスクール まめの木」を立ち上げることを決めました。ここは、公教育の学校に通わずフルタイムで子ども達が通うスクールでもあります。

2017年1月現在、生徒数は10人程度まで増え少しづつ形が成り立ちつつある「まめの木」。なぜそんなスクールを設立しようと思ったのか?どんなことを学ぶのか?テストもカリキュラムもなくて大丈夫なの?たくさんの疑問が出てきます。今回は西村源さんの篠山での生まれ育ちから今まで考えてきたこと、そしてこれからまめの木で叶えていきたいこれからの教育についてお話を伺ってきました。

京都生まれ、篠山育ち。お寺で経験した、集団生活のこと

元々は京都生まれ、1歳の時に篠山へ家族で引っ越してきた西村さん。お母さんが東京出身、お父さんがアメリカ人だったので、篠山へはIターンで移住してきたことになります。

“物心ついたころから篠山で暮らしていたので、篠山のいいところも悪いところもたくさん見てきました。中学校はかなりグレてたんですよ。学校行かない日も多かったし悪さしてましたねえ。当時嫌だなと思ってたのは、「勉強する意味がわからなかった」って事なんですよね。先生に意味を聞いたら「勉強はするもんだ」というようなあまり納得できない真理みたいな言い方をされて、余計に学校に行かなかった記憶があります。”

西村さんにとってただ勉強はするものだ、という考え方は納得のいくものではなく、その結果学校にあまり通わないようになっていったそうです。そんな西村さんですが、夏休みの期間にちょっと変わった過ごし方をされていました。

 “静岡のお寺にね、合宿みたいな感じで送り込まれたんですよ。そこには全国から悪ガキがたくさん集まってて、めちゃくちゃ怖い和尚がいるんですけど、ちょっとでも悪さしたり、自分の役割をちゃんとこなせないと思いっきり棒でシバかれたりしながらね、みんなで共同生活するんです。共同生活だから、お風呂を薪で沸かす担当があったり、朝一番に起きて門の掃除をしたり役割があって、それを責任もってみんな自分でやるんです。”

“夜になると高学年の子やそのお寺の生活に慣れている子たちが集まって、お茶会のようなミーティングをして。そこで、明日の⚪︎⚪︎担当というのが割り当てられるんですが、それぞれが責任をもってその仕事を最後までやり遂げなきゃいけないんですよ。”

家族の元を離れて見知らぬ人たちとの集団生活をした経験。まめの木でも、西村さんは子どもたちにただ規律で縛られるだけでなく、自分たち、みんなでやることの担当を持ったり、責任をもっていったりして欲しいと考えているそうです。

17歳からアメリカの高校へ。アメリカの学校スタイル。

中学校を卒業後西村さんは一度就職をしますが、病気を患い身体に不自由を抱え、働くことができなくなります。その当時、このままではいけないと強く感じて、国籍を持っていたアメリカの高校へ入学する事を選びます。

“アメリカの高校ではほとんど休まず学校に行ってたんですよ。学校が楽しかったし、そこで勉強の楽しさが見えかけたなって思います。授業はディスカッションやプレゼンが多くて、自分の頭で考える機会や時間が長かったことや、宿題も勉強量も多いんですが「何かの能力を伸ばそう」という意図がわかるし伝わってくるから、ちゃんと学ぼうという気になるんですよね。今スクールをするにあたってもアメリカの高校へ入学した事は本当にプラスになってます。”

他にも、生徒一人一人に担当のカウンセラーがついて相談にのってくれる事など、日本の教育とは少し違うあり方に学びを深めていった西村さん。そこでは、生徒が自分の勉強のレベルに合わせて授業を選べたり、自分の授業を最初から決められるのではなく、その選択を一緒に考えてくれる大人もいました。

まめの木では、お子さんを通わせている親御さんもどんどんスクールの中に関わります。「基本的に大人は下がって傍観者になるけれど、こんなことしたら楽しいんじゃない?こんなことはどう?と提案を投げかけることはどんどんしていきたいと思ってます。」と西村さん。さらに、親御さんたちで交流しながら行うミーティングでは、このスクールを一緒に子どもたちにとって良い場所にしていこうと、親御さんも主体となってみんなで環境を作っていきます。

ヨーロッパ自転車旅の経験と、様々な暮らしのスタイルとの出会い

アメリカの高校を卒業後、アメリカのコミュニティカレッジで約1年ほど学んだ西村さんですが、事情があって篠山へ帰ってくることとなります。その後働きながら過ごしていたのですが、また海外へ出る選択をすることになります。

 “アメリカでは特に、人より飛びぬけてできる事を追求したり、個人の主張を持ってる事が良しとされました。篠山に帰っては来たんですが、働きながら、自分は何がしたいんだろう?って考えてて。なんかはっきり覚えてるんですが、その当時に明日誰に会って・1日が終わって・って言うのが見えて、それが一生変わらないんじゃないかってことにゾッとして。”

先が見えるような、変わらない日々に違和感を覚えた西村さんは、篠山でお金を貯めてヨーロッパに旅に出ることを決意します。その際も、次の日起きることがわかるのが嫌だ、という理由で何も決めず、ホテルもとらず出発したそう。そこで様々な人に出会っていきます。

 “最初なんて、本当に何も決めてなかったので一週間パリでホームレスやってましたよ。そこでWWOOF(農作業などの手伝いをする代わりに、寝る場所と食べ物を提供してもらうホストと旅行者を繋ぐサービスのこと)をやってる人や自給自足の概念に触れたりして。“

旅行中にたくさんの人たちに出会った西村さんは、あることに気がつきます。そしてその気づきは、旅を終えて篠山に帰ってきた時に感じる「可能性」へと繋がっていきます。

広くて安全な、日本の田舎の楽しさ

“アメリカもそうだったんですが、ヨーロッパでも田舎に住むことの人気が高くて。あっちの人たちはでかい庭をもって広い空間があって、という事を求めるので、都市より田舎の方がずっと叶えやすいですよね。それで、篠山に帰ってきたら自分が思ってた以上に可能性に溢れてるなって事を感じたんですよ。”

旅をして帰ってきた西村さんは、日本の田舎の「やりやすさ」に可能性を感じたそうです。それは、子どもにとっても同様です。それ以外にも、商売や仕事だけじゃない・利害関係のない繋がりの多さや、ライバルが少ない分チャレンジしやすい環境・広い空間・何より子どもを育てる上でも大事な「安全」がものすごく優遇された環境だと思ったとお話されます。

これから、まめの木でやっていきたい事

お仕事では、主に高校生へ英会話を教えている西村さん。また、スクールもある自宅には年間100人近いWWOOFの方々が来られます。

 “田舎だと、どうしても文化の流通が少ないって事がネックになってくるんです。子どもたちには、WWOOFで来る外人さんに一緒に遊んでもらったりする時間もあるのと、インターネットで様々な情報を得る事ができるようにはしていきたいなと思っています。それから、まめの木の保護者さんや関わっている大人の方は本当に様々な経験をされてきたり多様なお仕事をされているので、そういった大人たちと交流する機会を増やしていきたいですね。”

親御さんが、大人がたくさん関わるスクールでもあるまめの木では、親御さん達でカフェをオープンする準備をしていたり、味噌作りなどのワークショップが開催されたりとコミュニティの様な環境ができつつあります。

田舎で子育てをする。日本では人口が集中した都市部で暮らす人の方が圧倒的に数は多いですが、篠山市では田舎で子育てをしたいという移住のニーズを聞く機会が多くあります。ですが、不安があり中々踏み切れない人たちも多くいらっしゃいます。保護者のみんなで協力しながら、子どもたちを育てていこう、みんなで暮らしを楽しんでいこう、というコミュニティができつつあるまめのき。まだほとんどが「最近来た」「最近出会った」人たちばかりのまめの木では、ワークショップやイベントなどオープンなイベントも頻繁に開催されていますので、田舎で子育てをするのってどんな感じだろう?と思われている方は、気負わず一度覗きに行ってみるといいかもしれません。

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