ニュータウンから、自然豊かな丹波篠山へ。
・元々お住まいはどちらだったんですか?
神戸です。須磨の山の方のニュータウンに住んでいて。ニュータウ ンは本当、どこ見ても景色が一緒なんですよね。
・どうして移住しようと?
もともとキャンプとか自然が好きで、漠然といつか田舎に住めた らいいなって憧れてました。何もなければそのままだったと思うん ですけど、自分の価値観が天と地まるごとひっくり返るある出来 事があって。それまで自己決定って、何かをするとかどこかへ行く とかプラスなことっていう概念があったんですけど、しないってい う一見マイナスなことも同じことなんやなぁって気づかされて。
今 まで当たり前から外れへんようにどこか不自由に生きてたけど、 そもそもその当たり前って自分が勝手に創り上げてるだけなんち ゃうか、ほんまは自分はどうしたいんやろうって考えたら、自分の 中の本音が溢れ出てきて、その中のひとつが自然がいっぱいあ る所で暮らしたいでした。それまでは、妄想でしかない基準に沿っ て生きていたように思いますけど、それが無くなった今では、まだ 見たこともない自分を見ることが楽しみで。基準が自分自身にな った。そうすると、ベタやけど、人生一度きり、今やらんでいつやる ん?って言葉が、いろんな場面で腹の底から出てくる。
人と人との「間」が心地よい。
・移住先を丹波篠山に決めた理由はなんでしょう?
なんで来たんてよう聞かれるんですけど、自分でもわからないん です。答えをずっと探してます。
・他も探されてたんですか?
実は別のところで家まで決まってたんですけど、いろいろあって無し になって。ちょうどその時、以前丹波篠山に来た際に知り合った自治 会長さんから「元気しとんかー?」って、電話がかかってきたんです。それでまた丹波篠山を訪ねたら、とんとんと家が見つかったんです。
・移住されてどうでした?
そうですね、人と人との間に間(ま)があるっていうか。ひとりになる 空間がたくさんあるとかどこでも混み合わないとか物理的なこと で気持ちにゆとりができたと思う。その流れで、人との間(ま)を心 地よく感じるし自分もその距離を保てているように思う。
・お子さんはどうですか?
興味あることや感じ方は大人以上にすごい速さで変わっていくか ら、引越して来るときには○と言っていたことも今では×って言わ れるようになったことがたくさんある。
・今もそんな感じですか?
そうですね。ここでは不便さ感じて一番上の子は神戸に帰って1 人で暮らしてる。
夏の暑さも冬の寒さも当たり前と思えるように
・移住して変わったことはありますか? こっちに住んだら、冬なんて動かれへんぐらい寒い。でもね、不思 議と耐えられるんですよ。
・ああ、分かります。しょうがないって思える。
なんか腹据わるでしょ。でも都会で、ビルの間から入ってくる北風 には耐えられへん。それがここなら、冬寒いの当たり前やん、何言 うてんねんって。
・何か困ることはあります?
田舎なんで家に虫が出るんですけど、子どもが虫が嫌いなので、 お母さんなんか出た!って寝てるのに起こされることかな。あとは、 食事するところがないのが。ちょっと1人でふらっと飲みに行きた くても近くに店がなくて。車乗らないといけないので、気軽には行 けないですよね。 あの、ごはん食べて泣いたことってありますか?
・うーん、ないですね。
私は、ごはん食べて、張り詰めてたものがどっと溢れ出て、安心し て泣くっていうことが昔は結構あって。食べるって本能だから、ど んなに嫌いな人でもお腹ペコペコでカツ丼抱えてガッて食べてる 姿見たら、嫌いとか私どうでもよくなるんですよ。その人の隙をこ っそり見た、みたいな。いずれはカウンターだけで、目の前にいる 人が頼んでくれたごはんを、その人を思いながら作るような店が したいなと。やりますよ、絶対やります。
・移住を考えてる人に伝えたいことはありますか?
キラキラした話だけではなくてこんなはずじゃなかったというよう な話をたくさん聞いてそれでも住みたいか確認するのがいいと 思います。感じ方もそれぞれ。ここに来れば変わるやろうとか、与 えてもらう気で来ても何にもない。
都会と比べたら、ここで暮らして いたら影響を受けることもできることもたくさんあるけど、反面そ の逆のこともたくさんある。田舎の人はやさしいとかよく聞くけど、 そうなんですけど、どこにいたっていろんな人がいる。
結局は、自 分が自分で選んだことをどう見たいのかかな、って。家族が最初 は引越しに賛成していても住み出してから心変わりが起きること もあるし、どんだけ用意周到でやって来てもうまくいかないことは たくさん。でも、自分が納得して決めたことなら、人って、形はどう であれどんなこともいい流れへもっていこうとするものやと思う。