農業はじめの一歩24

農業はじめの一歩24

丹波篠山 伝田農産  澤村 寛文(さわむら ひろふみ)さん・香里(かおり)さん

現住所:〒669-2422 兵庫県丹波篠山市後川上677-3

経営品目:黒大豆・黒枝豆・水稲・トマト・ブルーベリー

経営面積:6ha

H Phttps://www.denden-nousan.com/

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〜有機農法を貫き続けてきたからこそ、伝えていきたいこと〜

 

 

—— 2010年に奥様の香里さんのご実家である丹波篠山市に農業をするために来られた澤村さん。子供に無農薬、化学肥料を使わない野菜を食べさせたいと有機農法に取り組み始められます。幾度とない転換期を乗り越えられた経験が、有機農業に対する強い信念へと結びついています。——

 

 

 

 

「予想外のスタート」

2010年に丹波篠山市で農業を始めようときましたが、義父は長い間慣行農業でやっていました。妻も子育て真っ最中で、小さい間は子育て中心でお手伝いくらいの感覚でいたので、有機農法を始めるにあたっては、家族内でも理解されず本当に苦労しました。有機農法は手間暇がかかります。夫婦とはいえビジネスパートナーという形で四六時中一緒に経営という事業に取り組んでいかなければ成り立ちません。彼女の思いが私の思いに傾いてくれるまで時間がかかりましたが、今思えば、それがあったからこそ農地を守っていけることに繋がったのだと思います。しかし、最初は義父と全部の農地を一緒にやっていくことは難しいと考え、切り離して有機農業を始めました。

 

「丹波篠山市内での農業者さんとの繋がり」

小さい頃に手伝った農業のやり方を体が覚えてはいたのですが、有機農法となると何からどうすれば良いのかの模索の連続でした。自分の殻の中で閉じこもっていても前には進めない。縁あって大規模農家さんと知り合うことができ、色々と話をさせていただく機会がありました。大規模農家さんとしてやっておられるにはそれなりの訳がある。その考え方に、経営するという農業を学びました。仲良くしていただき、色々と学ばせてもらっています。その流れを通じて、認定農業者連絡協議会にも入れていただきました。兵庫県のM B A塾に通ったことも大きな刺激となりました。そこでも丹波篠山市の農家さんに色々と教わり、ネットでのマップ登録やH P、ネットショッピング、じゃらんの登録などに動きました。そこから、うちの商品に付加価値がついてたくさんのお客様に来ていただけるようになりました。様々なことを教えてくださる他の農家さんに巡り会え、同じ丹波篠山市で農業できることがありがたいと感じます。

 

 

 

「先を見据えた農業」

こちらにきて最初は、ベビーリーフのハウス栽培とミニトマト、ブルーベリー栽培から始めました。とはいえ農地もそんなに広くなかったので、収量にも限りがあります。そんな中、大手の高級スーパーさんに卸せるようになり、販路も安定してきました。オーガニックコットンの生産に伴い機械も色々と揃えていく中で、大量生産に対する取り組みも見据えられるようになりました。丹波篠山市の特産品を守っていける農業がしたいという思いもあり、ゆくゆくは義父の農地を譲り受ける時には黒大豆やお米も有機農法で取り組むことに不安はありませんでした。

また、農薬や化学肥料を使わないことを徹底して貫いてきました。虫が出たら「しょうがないなあ」と諦めもしました。そこで防除に薬を撒こうとは夫婦共々思わなかったし、その感覚を推し進めてきたからこそ、有機J A S認定取得にも繋がったのだと思います。

 

「失敗の中から学ぶ」

4年前に義父の経営する農地を譲り受けて、色々と有機のお米作りを試しています。なかなか思うようにはいかず、試行錯誤し昨年から合鴨農法を取り入れています。まだまだ勉強しないといけないし課題も多いですが、やっとスタート地点に立った感じがしています。今まで話したことのないご近所さんが、お孫さんと「田んぼ見せてな」と話しかけて下さったり、合鴨がいる光景は意外な効果も生まれました(笑)。丹波篠山市が「オーガニックビレッジ宣言」に手を挙げてくれたことで、有機農法の裾野を広げる手段として、そういった田んぼを見にきてくれている方々に「無農薬で化学肥料を使わなくても、野菜やお米が作れる。お孫さんにそういった野菜やお米食べさせてあげてないか?」と伝えていきたいです。お家の横にある3畝ほどからでもいいんです。少しずつでも広げていっていただければ嬉しいです。

大規模農家さんも慣行部門と有機部門とに分けて、有機農法に取り組もうと動いていらっしゃいます。自分たちの失敗も含めて伝えていきながら、「オーガニックビレッジ宣言」の有意義な活動として、自身の失敗から学んだことなどを踏まえて全力でサポートしていきたいです。

 

 

 

「丹波篠山 伝田農産として」

丹波篠山市の特産を守り、田畑を伝えていくという意味から「丹波篠山 伝田農産」という名前にしました。自分たちが農業を生業として子供を育ててこれたことを次の世代に伝えていきたいという思いもあります。今受け入れている研修生も来年にはなんとか次に繋げていけるところまできました。彼らの考えも正しいと受け入れた中で、仲間として有機栽培を広げていき、最終的には丹波篠山で就農し、生活できなければ意味がありません。またそういう思いの人を受け入れられる丹波篠山市にしたい。観光と農業で生活が成り立つ市にできるようお役に立っていける立場になれたらと考えます。

 

 

 

 

——優しい笑みを浮かべながら、様々な人との出会いにはありがたく感謝しかないと話してくださいました。確固たる信念と柔軟性を持ち合わせておられる澤村さんだからこそできることがあるのだと思います。——

 

202312月18