農業はじめの一歩17

農業はじめの一歩17

丹波篠山ファームMaegawa

前川 康幸(まえがわ やすゆき)さん・前川 知余美(まえがわ ちよみ)さん

現住所:丹波篠山市犬飼258-2

経営品目:水稲(コシヒカリ・ヤマフクモチ)・黒大豆・メロン・イタリア野菜

経営面積:7.6ha

H P:https://maegawa-farm.business.site/

 

〜「経験」があるからこその「挑戦」!〜

 

—— 水稲と黒大豆はもちろん、丹波篠山市では珍しいアールス系メロン(有機J A S認定)と有機イタリア野菜を、ご夫婦二人三脚で作っておられます。兼業農家から専業農家となられて4年、新しい試みを取り入れられた「丹波篠山ファームMaegawa」さんの「農業への思い」は、シンプルながら奥深い「丹波篠山への思い」でもあります。——

 

 

「風景から感じた違和感」(前川康幸さん談)

 

私の住む犬飼集落は国道176号線沿いにあり、京阪神地域からお越しの皆さんにとっては「丹波篠山の玄関口」です。一直線の道路の脇に並ぶ田畑が、「素晴らしい景色」として目に飛び込んできます。兼業農家として営んでいたある日、「作物」ではなく「草」が生い茂り緑色に広がる風景が目に止まり、「違和感」という言葉では言い表せない思いが込み上げてきました。「休耕田をなんとかしたい」と一念発起し、早期退職して専業農家となり、休耕田も耕作するようになりました。近隣の農家さんも休耕田の耕作に動き出され、犬飼集落では休耕田がほぼ無くなりました。同じ思いの方々がいらっしゃったからこその「取り組み」が、実を結んだのです。

 

 

 

 

 

「農家ってすごい!」その感動が原動力(前川知余美さん談)

 

農業に興味が湧いたキッカケは「落花生」です。字の如く「落ちた花が生えてくるのかな?」と試しに1本植えました。そうしたら本当にその通りになったんですよ。花が落ちた後地面に向かって子房柄が伸び、地中に実がなりました。植えて作物ができることは、当たり前のことかもしれませんが、その知識と技術を持ってすれば、色々な作物ができます。農家は、食糧危機になったとしても食べていけます。「農家って最強で、すごいじゃない!」と感動しました。また、先祖から引き継いだ農業を絶やすわけにはいかないと改めて思いました。草引きなど大変な作業はありますが、花が咲き、実がなり、こちらが手をかけた分だけ作物は応えてくれます。「しんどいこと」よりも「楽しさ・面白さ」の方がはるかに優っています。あの日に感じた「感動」が、そう教えてくれました。

 

 

 

 

「次なる感動を求めて」(前川知余美さん談)

 

私は、自分の「好きなもの」を有機農法で作っています。中でも「メロン」が大好きで、7年前から作り始めました。初めての年は上手くいきませんでしたが、「ダメで諦めるのはよくない」と私の心に火がつきました。試行錯誤し「美味しいメロン」ができると感動が倍になって押し寄せてきました。そして次のステップへと進みたくなり、壁にぶつかる度に乗り越えていくという事を繰り返しながら、日々感動を求めて取り組んでいます。

現在は、京阪神や東京圏に出荷しています。無農薬なので、手間を惜しまず可愛い子供のように大切に育てています。その価値をご理解いただいて、「丹波篠山産のメロン(アールスムーラン)」を多くの丹波篠山市内の皆さんに味わっていただくことが夢です。

他にも愛情を注いだイタリア野菜(ストリドーロ・フェンネル・ルバーブ・ビーツ・ファーべ等)があります。美味しさを追求する「農業」は、楽しくて仕方ありません。

 

 

 

 

「程よい距離感を保ちながらの夫婦二人三脚」(前川知余美さん談)

 

夫婦2人での農業なので、お互いの担当を決めて作業しています。常に一緒に行動すると喧嘩になるかもしれませんから(笑)。黒大豆や米の栽培、畝立てなどの仕事は、土をよく理解して経験値の高い主人が、細やかな作業やメロンとイタリア野菜は私が担当です。空いた時間でお互い手伝い合うようにしています。いい距離感で協力すれば作業効率も上がりますし、感謝もできます。職場感覚とでもいうのでしょうか。そうすれば自分の担当に責任を持って作業できます。これも大切な「農業のコツ」です。

 

 

「気候の変動などをプラスに捉える」(前川康幸さん談)

 

小さい頃から手伝ってきたからこそ、この地での農業のやり方・作業の進め方は知っています。丹波篠山を代表する「黒大豆」「コシヒカリ」などの通年作業、土の特性なども熟知しています。しかし、近年は気候の変動などに惑わされることが多く、このままでいいのかと思うこともしばしばです。厳しい状況の中でも良いところを見つけて、そこに合った農業をしていかないといけないですよね。恵まれた土壌、空気や水の良いところで、1年に1回の収穫では勿体無いという考えもあって、「麦」の栽培を始めました。今年は、試験的に「大麦」を作り、一通りの作業がこなせました。これからは、有機での「小麦」にチャレンジしようとしています。私たちが頑張ってできるのであれば、しっかりとしたものをお届けしたいです。国産麦が求められていることもありますし、こんな時代だからこそできる農業があると思うのです。

 

 

 

 

—— 弾丸トークの知余美さんのお話を微笑みながら聞かれる康幸さん。「農業へのこだわり」と「丹波篠山への思い」は同じだからこそ、お互いを尊重しあっていらっしゃるのだと感じました。自分達の作物が人の繋がりを生み、そして丹波篠山が盛り上がればと今も可能性を追い求めていらっしゃいます。——

 

(2022年7月)