農業はじめの一歩16

農業はじめの一歩16

有限会社 みたけの里舎

石田浩一(いしだ こういち)さん・石田英正(いしだ えいせい)さん

現住所 〒669-2308 兵庫県丹波篠山市和田41

経営品目:水稲(コシヒカリ・もち米・加工米・飼料米)・黒大豆・小豆・白大豆・栗

農産物加工

経営面積:40ha

H P    :https://mitakeno-sato.com

 

 

〜丹波篠山の素晴らしい農村空間を最大限に活かす「農業」を目指す〜

 

——ご兄弟で力を合わせ、従業員3名・パート1名で「有限会社 みたけの里舎」を営まれています。昔からの農業のあるべき姿を重んじ、時代背景に合った柔軟な考えを取り入れる経営で、将来も見据えた取り組みに突き進んでおられます——

 

 

 

 

「突然に訪れた<みたけの里舎>の継承」

 

浩一さん:父は、とにかく「農業」に頑固なほどに邁進していました。漠然と手伝っている中、父が怪我で仕事ができなくなってしまいました。別人のように覇気のない父の姿を見るのが、本当に辛かったです。とは言っても、農業は 休んでいられません。耕作面積を増やし、農地の集約化や大型機械を導入できるように頑張りました。

 

英正さん:加工場ができた年に引き継いだので、しっかり稼働させるために必死でした。最初は赤字続きで、なんとか柱に なる商品をしっかり販路に繋いでいけるよう試行錯誤の繰り返しでした。

 

浩一さん:多くは語らない父でしたが、その背中を見てきました。私たちの心の芯の部分で、父は偉大であり、その意志を深く尊敬しています。

 

英正さん:何気なく手伝っていた農業ですが、今は「やりがいのある仕事」だと実感しています。父が残してくれたこの加工場があるからこそ、次のステージを目指そうと考えることができます。

 

 

 

 

「現代の農業とSDGsの取り組み」

 

浩一さん:20代前半の若い従業員にも恵まれ、僕は「農業生産」、弟は「加工・販売」で運営しています。 若者たちの「農業の捉え方」は、僕たちの世代とは違っています。経験したことのない、自然相手の「農業の面白さ」に興味を持って入社してくれます。就労時間は朝8時から夕方5時です。休日も週2日とるのでサラリーマンと変わりません。働き方も大きく変わっています。

 

英正さん:加工には女性の意見を取り入れて、商品開発に取り組んでいます。発想も豊かで、思いもつかない商品が提案されます。我々も時代に沿った柔軟な対応ができなければいけないと感じています。

 

浩一さん:作業の面でも現代の流れを取り入れSDGsに取り組んでいかなければなりません。広い耕作面積だけに実践する 価値はあります。人手のかかることですが、本来の「農業」の姿に戻っているのだとイメージしています。加古川水系の最上流の丹波篠山ですから、環境に配慮した「自然にやさしい農業」を目指していきたいです。

 

英正さん:環境に配慮することで、心と体に優しい商品が生まれます。SDGsを取り入れた農産物を加工することで、 黒大豆の煮豆やお餅などの商品の美味しさと共に「安心」をお客様にお届けすることができます。

 

 

 

 

「<みたけの里舎>だからできること」

 

浩一さん:僕は、あと20年は今のように働けると思います。しかし、別の言い方をすると「僅か20回しか作れない」 のです。そう思うと、チャレンジしたい気持ちが湧いてきます。条件の悪い休耕田に適した「新しい作物」を 作ってみたいです。失敗するかもしれませんが、近年の気候の変動もある中で、丹波篠山のブランド品が新たに生まれる可能性を秘めています。自分の面白いと思うことを追求できるのは楽しいですし、農産物を生き物と捉え、それを相手に仕事させてもらえるのは有り難いことです。従業員の皆も前向きに頑張ってくれて います。将来は、任せてもいいかなと思っています。そういった引き継ぎができることも農業法人ならではの 強みです。個人で継承することが難しいことも、「みたけの里舎」として叶えられます。

 

英正さん:加工の分野でも、新しいブランドができることで農業との連携が図れます。丹波篠山のネームバリューを最大限に生かして、新しいものを発信し続けることが重要です。個人で頑張るには限界がありますが、「みたけの里舎」であれば色々な方に関わっていただくことでアイデアを増やし、法人として成長していけます。新たな雇用を生むことのできる「農業」には、まだまだ伸びしろがあると思います。

 

「農都 丹波篠山の魅力を守る」

 

浩一さん:丹波篠山市は「農都宣言」をしています。恵まれた丹波篠山の気候や風土の中、百姓ができることに  感謝しています。しかし、休耕田が増加している現実もあります。このままでは丹波篠山の魅力自体が危ぶまれます。地域の壁を越え、丹波篠山の農業を盛り立てられるような、広大な休耕田を賄えるだけの組織づくりが 必要です。簡単にできるとは思っていませんが、農業主さんたちとの繋がりを大切にし、一緒に取り組んでいかなくてはならない課題です。

 

英正さん:BB L I N K(丹波篠山市の農業者が設立した農産物集出荷会社)にも携わっています。丹波篠山の大地の恵みを多くの方に知っていただき、お届けできるのは組織ならではの特色です。何より、地域の 農業者さんとの繋がりは、自身の刺激になります。販路の拡大のために、まだまだ頑張っていきたいです。

 

 

 

 

——職人気質の兄 浩一さんと探求心あふれる弟 英正さんとのバランスがとても心地よく、従業員の皆様が一緒に頑張ろうと思われる理由の一つなのだと感じました。今ある問題から目を逸らすことなく、実直に取り組もうとされる姿勢が、未来の丹波篠山にとって大きな糧となるよう願っています——

 

(2022年3月)