農業はじめの一歩14

農業はじめの一歩14

戸出ファーム 戸出 喜久(とで よしひさ)さん

現住所:〒669-2452 兵庫県丹波篠山市野中156

経営品目:水稲・黒大豆・茄子他

経営面積:15ha

You Tubehttps://www.youtube.com/channel/UC26dKrWJq11guumnzJDvAFw

 

 

〜挑戦はまだまだこれから!「農業」への熱い思い〜

 

——20年間続けてこられた兼業農家から、令和2年に認定農業者として専業農家になられた戸出喜久さん。丁寧な農地の管理をされることから地域の信頼も厚く、年々耕作する農地は広がっています。「農業は、地味な仕事ばかりですよ。」と少年のような笑みを浮かべながら、「自身が目指す農業」に情熱を傾けられています。——

 

 

 

 

「祖母の手伝いから始めた農業」

子供の頃から祖母の畑仕事は見ていました。農業機械に乗ることが好きなこともあり、10代の後半からサラリーマンの仕事もしながら本格的に手伝い始めました。祖母が一人で頑張っている姿に後押しされたのだと思います。20代に入り、結婚して子供ができた頃から、「家族で取り組む農業」に対しての意識が大きく変わりました。自分が育ってきた環境の「ありがたみ」が実感できたんです。「兼業農家」という副業に興味が湧き、実践しようと頑張り始めた矢先、祖母が体調を崩しました。当時4ヘクタールの農地を耕作しており、機械に乗ってはいたものの、その作業に至るまでの過程はほぼ祖母がしてくれていました。周囲の皆さんに聞きながら、田んぼの水を見て回ることから始めなければいけません。右も左も分からず必死でしたね。その経験が今の農業に取り組む姿勢の原点になっています。

 

 

 

 

 

 

「兼業から専業へ〜家族の助けがあるからこその今〜」

一人で頑張り始めた頃から「地域の皆さんに挨拶をする」という当たり前のことを、農作業中でも心がけています。おじいさんやおばあさんと会話をすることが大好きなんです。何気ない優しさを感じたり、コミュニケーションの中から「気づきや知恵」をもらったり、畑を預かって欲しいなどの相談も聞かせていただくようになりました。「戸出さんに任せたら、丁寧に管理してくれる」と信用していただいている事に応えていきたいし、「地域の農地を守ること」に自分が役に立ちたいと考え始めました。年々耕作面積も広がり、子供の手が離れたことなどもあって、退職して本格的に農業を始めようと決意し「認定農業者」になりました。

しかし、私一人ではできません。「家族の支え」が不可欠です。息子も少しずつ手伝ってくれるようになりました。妻もゆっくりできる休日もない中で、朝から晩まで頑張ってくれます。専業農家になって一番変わったことは、夫婦が同じ土俵に立って作業するようになったことです。お互いを尊重しあって、毎日仲良く畑に行きます。もちろん家事も分担していますよ(笑)。

 

 

「好きな仕事」

仕事って好きになればなるほどアイデアや工夫が湧いてきます。そういった意味で、「農業は無限」ですよね。2年ほど前から茄子を作り始めました。丹波篠山市内でも沢山作っておられるところは少ないと思います。直売所に出荷すると、バーコード管理されており、売れ行きを携帯電話で見ることができます。どんどん売れていく様子が数字でリアルタイムにわかるのが本当に嬉しいです。露地野菜は、出荷までに手間暇がかかります。買ってくださる方のためにも、「ちゃんとしたものをお届けしなくては!」と気持ちが引き締まります。

「土作り」でも新たな取組を始めました。時期を見ながら有機の肥料を混ぜ込んでいます。

気候の変動には苦戦していますが、今出来ることに力を注いでいます。

また、作業の効率化も大切です。そのために「法人化」の道も選択肢の一つだと考えています。大きな農業機械の購入はもちろんですが、雇用が生まれれば更に良い仕事ができ、地域もプラスとなるよう動けます。今、自分に足りないところをしっかりと見極め、努力し克服していかなければと思っています。農業者さんや市の農都政策課の話を聞いて情報を収集し、「経営主」となるための勉強を始めたところです。私自身が、まだまだ成長段階です。

 

 

 

 

 

「地味な作業ほど惜しまずに」

私は、米作りでは田んぼの溝切りをして(田んぼに排水を良くするための溝をつくる)中干し(一旦水を抜いてから乾かす)をします。細かい水の管理をしていますが、その手間をかけることによって成果が得られます。手を加えれば加えるほど、作物は応えてくれますし、達成感に繋がります。

田の水や畑の見回り等、農地管理の仕事があります。年配の皆さんがされていることが多いのですが、若い人こそ、そういう仕事をやるべきだと思っています。農作業に入るまでの準備が肝心なのです。息子にも「農業はそこからやで」と話します。

「就農」を志しておられる皆さんに伝えたいことは「地味な仕事を惜しまないで欲しい」ことです。それが、地域の皆さんや祖母の働き方から学んだ私の農業に対する「信念」です!

 

 

 

 

 

 

——農作業をされている合間も、楽しく会話をされている戸出さんご夫婦。「仕事のパートナーとして、主人として感謝しています。」と奥様も活き活きとお話してくださいました。家族の温かさに包まれて、戸出さんの挑戦はまだまだ続きます。——

 

(2021年12月)