森田耕司さん

農業はじめの一歩1 

認定農業者

quatre ferme(キャトル フェルム) 森田 耕司(もりた こうじ)さん(46歳)

有機野菜を「消費者」から「生産者」へと立場が変わったからこそ、本当に安心して食べていただける完全な有機野菜を手掛けています。また、オーガニック「和綿」の生産から製品にするまでをプロデュースし、農業の可能性を広げていくために頑張っています!

・現住所
丹波篠山市辻

・経営品目
和綿、黒大豆、黒大豆枝豆、小豆、水稲

・経営面積
7ha

・キャッチコピー
和綿を丹波篠山の特産に!

導かれるように丹波篠山で就農スタート

以前は神戸で花屋を、妻は保育士をしていました。夫婦で一緒にできる仕事がないかを模索していたそんな折、有機農家さんにも色々あり、消費者が安心して買える有機野菜が少ないことを知りました。毎週有機野菜を送っていただいていた丹波篠山の農家さんへ手伝いに行っている中で、「移住して農業ができるかな?」と相談したところ、「1年くらい研修で教えてあげるよ。」と快く受け入れていただきました。兵庫県の研修制度を利用して、1年間勉強させてもらいました。同時に家を探し始め、予想以上に早く移住することができました。研修後、地域の皆さんのご理解もあって、2haの農地を貸していただくことになり、新規就農者としてスタートしました。丹波篠山に縁があったのですね。

新規就農初年度で体験した「悲劇」

有機農法・自然農法に取り組む中で、種を蒔き、草を刈り、研修で学んだことを日々実践しました。自然相手の作業ですから、楽しむというよりは「やらねばならない」という感じです。

秋を迎える頃、農業の「厳しさ」に直面しました。収穫前の時期、イノシシや鹿の被害に会いました。黒豆は全滅、お米もイノシシにヤラれました。獣害がこんなにも酷いとは思っていなかったので、呆然としました。作付けなどが上手く行かないのは自分の責任なんですが、獣害だけは、いくら策を講じてもゼロにはなりません。悔しさばかりで、言うていくところがないんです。畑の真ん中で叫ぶこともできませんしね。

農業をカッコいい・スタイリッシュな仕事の原点にする

私は、農作業が辛いと思ったことはありません。自分の好きなことしかしていませんから。

でも、同じ考え方以外のもっと多くの皆さんに農業に興味を持ってもらいたいんです。その計画の一つに、自分たちで作った作物を使ったカフェ事業を考えています。私達にそのノウハウはありませんので、料理に興味のある方や接客業に興味のある方との雇用が成立すれば、農業発信で3次産業まで繋げていけます。それぞれが好きなところから関わっていくうちに、農業に興味を持っていただけるようにプロデュースしています。農業が泥臭い仕事ではなく、あらゆる可能性を生み出す原点であり、百姓は原材料を握っているからこそ何でもできるんだ!と理解して欲しいです。そのためにも利益の伴ったスタイルを確立させていかなければいけないと思っています。

健気なオーガニック和綿の野望

現在7haの農地をお預かりしています。その中の3haで和綿を栽培しています。個人では国内最多の和綿栽培量を誇っています。もちろん有機栽培です。綿は、農薬使用量第1位の農産物です。海外では枯葉剤を使用して、一度にコンバインで収穫しています。環境に配慮したオーガニックコットンが注目されている由縁です。日本の気候にあった和綿が、機械紡績と安価な洋綿の規制緩和により衰退してきました。しかし、農業栽培品目として優れている和綿をどんどん増やしていきたいのです。無農薬でも虫はつきにくいですし、マルチを敷けば畝の間の草を刈るだけです。

綿は腐らないので、急いで収穫する必要がありません。9月末から1月の間が収穫時期ですが、黒枝豆の収穫が忙しい10月中はそちらを優先できます。下向きに綿をつけて、健気に踏ん張って待ってくれます。収穫もスポッと取れて軽いので、お年寄りも楽に作業してもらえます。

ふわふわの綿の収穫の後の指先はツルツルになりますよ。何より魅力的なのは獣害に合わない事です。イノシシが入ってきてもミミズを掘り起こして食べるくらいで、綿には見向きもしません。新芽の頃に気をつけるくらいでよいのです。5月に種を蒔いて、8月に摘芯しますが、ほとんど手間がかかりません。連作もできるので、空いている農地を利用していただいたり、耕作放棄地にも活用できると思います。

収穫後の綿繰りもお仕事の一つとして、就労施設にお願いしています。そして今始動しているのが、ブランディングです。アパレル部門として担当者を雇用し、製品化についてお願いしています。オーガニック和綿の価値をわかっていただけるような商品をアパレル関係に波及しようとしています。ここでも、農家発信のカッコいい、スタイリッシュなお仕事の一環としての事業確立を目指しています。

「丹波篠山産のオーガニックコットン」が、安心で一生使っていただける商品になろうとしています。もちろんリスクはあります。しかし怯んではいられません。森田の作った綿が製品になってもらうところを見てもらわないと、作ってみようと思ってもらえないいのでね。この事業が軌道に乗れば、丹波篠山の新しい特産物が誕生するのだと信じて、突き進んでいくのです!

丹波篠山で新規就農を考えておられる皆さんへ

僕のところにも相談に来られます。1〜2年、上手く作物ができなくても食べていけるお金は持っていないと絶対無理やでと言います。僕もそうしましたので。家の水回りの改修費も予算の中でいける物件を購入しました。賃貸5000円とかでお金も蓄えずに就農するとか、「農業をなめんなよ!」って感じです。お金=(イコール)覚悟だと思うんです。覚悟のある子は、ちゃんと貯金してくるし。補助金目当ての子には、「それだけでは食べていけないで」と言います。農業辞めたら、その分返さないといけないこともちゃんと理解してほしいです。僕たちも機械を一から揃えるために認定農家になって、金融公庫さんからお金を借りられるようしてきましたから。計画をしっかりと立てて、農業を生業として考えてほしいですね。

もう一つ重要なのは、家族と地域の理解です。農業は、一人でできません。農家の田舎暮らしは、大変忙しく休みが無いに等しいです。都市部の生活のほうが、ゆっくりしていたように思うほどです。そんな生活リズムを理解してくれる家族の支えは、とても重要なポイントです。

地域の理解も同様に、とても大切です。借りた農地で綿を栽培している時に、作業の仕方などを見てもらっている中で、「うちの畑もやってくれてないか?」「畑辞める言うとってやから聞いたげよか?」と紹介していただいき、全て受け入れるようにして畑を増やしてきました。子育てをする上でも、ご近所の皆さんに助けていただいたことは、数多くあります。

高齢化の進む中で、地域の方々と理解し合いながら、私達、若手農業者が担っていかなくてはいけないという思いが年々強くなってきました。これから、丹波篠山で就農しようとお考えの皆さんには、農業だけでなく地域のことも考えていただきたいです。


虫やカエル、蛇が苦手な森田耕司さん。「苦手でも農業はできますよ!」と断言されていました。「綿畑の野ネズミが、うちの綿で家を作っていますよ。4000円/kgしますよ〜と言いたいですが、うちの綿が喜んで使ってもらえていると思うと嬉しいです。」とにこやかにお話してくださいました。

新しい視点で、新しい動きをされている森田耕司さん。丹波篠山には、まだまだ可能性を秘めた農業があることを教えて下さいました。

 

(2020年2月)