インタビュー者:営業販売部 部長 山本哲様
・篠山から全国へ 黒豆の老舗「小田垣商店」
1734年が創業になりますが、その頃は丹波黒とは関係のない鋳物商(いものしょう:金物屋)を営んでおりました。1868年に当社の前身である小田垣種苗店へ転業いたしました。現在の社長で7代目になります。
主に弊社が取り扱う商品は、丹波黒大豆と丹波大納言小豆が中心となっています。明治元年に創業し、黒豆の種と、大納言の種を販売するようになって、地元の生産農家さんにお世話になり、収穫されたものを小田垣が仕入・選別、販売するというのが事業の発祥になります。
昭和45年に減反政策がスタート以降、それまでは、あぜ豆として丹波黒豆は植え付けられていたのが、減反政策がスタートしたと同時に水田でも丹波黒を作るようになりました。
そこから少しずつ販路を拡大していき全国の小売店さん、豆屋さんなどに苦労して頂きながら一般の消費者の方に丹波黒を認知してもらえるようになり、今の丹波黒大豆、丹波大納言小豆の老舗の会社としての位置を築きました。
※(株)小田垣商店外観
・丹波黒大豆の歴史「全国に至るまでの苦難の道」
丹波黒大豆の特徴は、大粒で丸くて粉が吹いているという事、これが大きな特徴なんです。粉を吹いているという特徴について「見た目が汚れている」という事を昔は言われていました。そして当時は粉を拭き取るためにわざわざ磨いていたようです。
北海道の黒豆が「ひかり黒」といわれ磨いているから綺麗なんです。それに対して丹波黒大豆は粉が吹いており値段も高いと言われることもあり、最初はどのようにブランド化するのか色々と苦労したようです。
ただ、「値段は高いけれども大粒で美味しい。」というのを何年もかかって小田垣が中心となって東京や日本全国の小売店に説明しご納得していただいて広がったという事です。今と違って交通の利便性が悪く、配達ひとつにしても運送業者もありませんし、地道にご説明にお伺いして大変苦労したと聞いています。
・「自身で調理し素材の味を楽しむ」
本当は、丹波黒大豆を年間通して食べていただきたいのですが、毎年、秋以降から年末に注文が集中しています。年間需要としては加工用・調理済みで比べると割合が「6:4」で加工用が断然多く占めていると思います。ですが一般家庭で丹波黒大豆は「調理する時間や手間がかかる」と言ったイメージがあるのでしょうか、調理済みの物を購入される方が多いという傾向があります。日本の文化として豆はできればご自身で家庭、ご自身の味で調理していただきたいなと思います。
※店内風景
・全国区から世界へ「小田垣が考える」マーケティング戦略
5年前から香港で展示会を行ったり、台湾に視察に行ったりしています。今後少しずつですが、加工品をアジア中心に販売できればと考えています。来年から減反政策の関係もあり、農業の仕組みも変わってきますから、販路を広げて生産者さまに作って頂いたものを販売できるようにと思っています。
小田垣が大切に考えているのは、生産者の方々が「丹精こめて作った丹波黒大豆と大納言小豆の売れ残りをゼロにする。」そういった想いで全国から世界に発信しています。生産者さまに少しでも還元したい、そういった気持ちで日々仕事をしています。
※丹波黒大豆の「手より選別」作業風景
・小田垣の「味が出る仕事」とは
私が率直に思うのが「地味な会社」なんですよね(笑)というのが、仕事自体も地味なんですけども、それが篠山には丁度いいと私は思っています。「やっていくうちに味が出てくる仕事」です。
日頃している仕事・作業は「手より選別」といいまして、弊社の大切な選別作業です。朝8時30分から夕方5時まで女性たちが一生懸命に一粒一粒品質を見極めてくれています。1日1人で100キロ選別し、1日中、目と手の五感で選別する手作業なので、忍耐力も必要で大変な仕事です。
男性の作業は力仕事が多く、黒豆の入っている大袋(30キロ)を選別また保管・出荷します。それを1日1000から1500袋を動かします。これは本当に忍耐力が必要で、地道な気持ちを持ちながらモチベーションを保つことが必要な仕事だと思います。
・離職率が低いその理由
丹波黒は地元の特産でもありますし、日本一、世界一大きな品種の黒豆を扱っているという事で、非常にお客様に喜んでいただける機会が多いです。特に年末は、黒豆が大きいなどの反響も増えています。その他には、ご購入頂きましたお客様にお礼状を必ずお出しするのですが、お客様にも返信していただく機会がありまして、
「今年は美味しく炊けました。ありがとう。」とお喜びの声を頂く機会が多くあります。他にも、ホームページのコメントを書いて頂いたりと様々なところでお声をいただき社員一同、大変うれしく思っています。
電話や文章でのやりとり以外にも、お客様と直に触れ合う機会もあります。例えば、「食育」について会が開かれたその時に参加されたお客さまが、お礼の電話をくだささった事もあります。食育を通じて参加頂いた消費者の方のご意見や丹波黒への想いを従業員のみんなで「お客様の声」として共有し「お客様からいただいた喜びの声を従業員一人一人に伝える」これを非常に大事にしています。
仕事には派手さは無いですし忍耐力も必要ですが、働く環境や、歴史ある仕事やお客様のありがたいお言葉にやりがいを持って仕事をしてもらっている所が、勤続40年の大ベテランの社員も在籍する、離職率の低くさに繋がっているのかも知れません。
※丹波黒大豆の「手より選別」作業風景②
・従業員の男女比について
準社員さんを含めて約58人、男性が18人、女性が40人と女性が多いです。
女性ならではの繊細さを必要とする作業が多いからかも知れません。最も重要な手より選別作業は、全員女性で最近ここ10年では若い方も多く働いて頂けるようになりました。高卒で採用もするようになりましたし、Uターンの方も増えてきました。
・会社が大切にする「従業員への感謝の心」
老若男女問わず従業員たちの親睦の場が数多く小田垣にはあります。一昨年は、社員旅行で海外に行きました。他にもバス一台を貸し切って約50人で毎年、京都へ初詣に行ったり、春は花見をしたりしています。年に1回必ず親睦旅行をする会社も景気とともに少なくなってきているかと思いますが、「従業員同士の親睦を深めてほしい。」という、会社から職場環境への配慮や思いやりが感じられ大変嬉しく思います。
・小田垣で一緒に働きませんか?
この職場に向いている人は、真面目で正直で素直さがあってキッチリとした仕事ができる人でしょうね。小田垣商店で一緒に働いていただける方を随時募集しております。興味がおありの方は是非ご連絡ください。Iターンの方や、Uターンの方も大歓迎です。そして、できれば篠山に住んで欲しいです。是非一度ご覧ください。