農業はじめの一歩31

農業はじめの一歩31

株式会社諏訪園 代表取締役 酒井 一行(さかい かずゆき)さん

営業企画部 酒井 一徳(さかい かずのり)さん

丹波篠山市味間奥

経営品目:お茶(煎茶)・栗・水稲・黒豆・さつまいも・いちご  その他

経営面積:2.5h

 

〜「苦しい時代でも継続していくことの大切さ」〜

——煎茶製造卸を始められた先代から事業を継承した酒井一行さん。現在も煎茶にこだわり、そのお茶に合ったお菓子を提供することでお客様に喜んでいただくことをモットーに事業をされています。息子の一徳さんもその意志を継ぎ、新しい取り組みに挑戦されています。——

 

 

 

「諏訪園の歴史」

(一行さん)父が昭和40年代にお茶の製造卸を始め、昭和63年に直売を始めました。しかし、ペットボトル飲料の販売、急須のない家庭が増えてくるなど時代の変化を受け、お店の売上は厳しさを増していきました。

そんな折、1988年の「ホロンピア〜食と緑の博覧会」で峠茶屋として出展し、京都からお団子などのお菓子を仕入れて自社のお茶と一緒にお客様へお出しすると、思いがけず好評でした。そこからヒントを得て、お菓子も一緒に販売してみようと思い、お菓子職人を招いて諏訪園独自のお菓子製造を開始しました。現在では、市街地でも分店を開店して和菓子を販売するなど観光客や地元のお客様に愛されるお店になりました。

 

「和菓子づくりの苦労」

(一行さん)私は大阪の大学を卒業したあと、手に職をと思い夜間の菓子専門学校に通ってお菓子の基本を学びました。その後、お茶を作る父親とお菓子を作る息子として両輪でやっていこうと丹波篠山に戻ってきました。最初は私とパート従業員でお菓子作りをスタートしましたが、和菓子作りは多岐にわたり、和菓子の製造機械会社や地元のお菓子屋さんに直談判して技術やノウハウを教えてほしいと頼んで回る日々でした。

 

 

「お茶と和菓子を楽しめるお店」

(一行さん)丹波篠山の玄関口にお店を持ちたいという私の夢から、平成15年に諏訪園インター店をオープンしました。お陰様で皆様に愛されるお店になり、その成功体験は自信となり、また次のステップへ夢が広がります。夢は死ぬまで持ち続けたいですし、悔いの残る人生でありたいと思っています。(笑)

息子(一徳氏)がアメリカのテキサス留学から戻って来てくれたので、新たな事業として自家製のいちごを栽培し、諏訪園ならではの「いちご大福」を作れるよう親子で挑戦し始めたところです。息子にも成功体験をしてもらいたいと思い、息子自身がコンセプトを考えて本店を改装し、新しく「五感Cafe」を令和8年1月にオープンしました。諏訪園本店でしか味わえないメニューでおもてなしできるお店です。

 

「テキサス留学からイチゴ農家修行」

(一徳さん)米国のテキサスで、日本人の少ない環境のなかコンピューターサイエンスやAIプログラミングなどを学んできました。

家業を継げと言われたことはありませんでしたが、そのうち自分が継ぐだろうと意識はしていました。父親から「いちごの栽培を学んで来い」と言われたとき、今後、農業はとても重要な分野になると考えていたので喜んで九州の八女市にある研修施設に向かいました。

いちごは栽培する品種や気候だけでなく、作り手によってもその味わいや見た目が左右されるため、奥深い魅力があり面白い作物です。研修ではハウス担当者の元で、約3年かかるカリキュラムを1年で習得するため必死で学んで来ました。

「五感Cafe」は、お客様自身がお団子を焼いたり、お好みで味付けを変えることができる体験型のお店です。諏訪園のお菓子を五感で感じることで、人の輪が広がり、多くの人の憩いの場になって欲しいという思いが詰まったお店になっています。

 

 

「諦めたら終わり、諦めないことが大切」

(一行さん)時代の流れの中でお茶が売れない時期が続き、辞めようかと考えたこともありました。しかし、父から受け継いだこの茶畑をみて、頑張るしかないという思いでこれまで続けてこられました。

昨今の空前の抹茶ブームを受け、静岡でも抹茶の木を取り扱う農家が増えてきていますが、一方で煎茶が不足しているため3番茶でも高値がつきます。先代からの茶畑をコツコツと守ってきたからこそ、このような機会に恵まれました。茶畑を維持していくことは時につらいこともありますが、クラブ活動のような感覚で楽しむ気持ちを忘れずに取り組んでいます。

今後、息子である一徳に事業継承するため、コンプライアンスだけでなく社風や組織そのものの体制も整えていこうと、現在、会社全体で取り組んでいます。時代に対応し、会社をこれからも続けていくため、息子と奮闘しながら諦めない気持ちで日々取り組んでいます。

 

 

 

——時代の流れに適応しながら、耐えるときは耐え、追い風に乗って進むときもある。

一行さんの広い視野を持ち、お客様ファーストを忘れないその思いは、背中を見ている一徳さんに受け継がれていくのだと思います。——

 

2025年1月19日

 

 

 

 

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