Classo2017教育特集・vol.1 地域資源を使って、循環型農業のモデルタウンを生徒たちと一緒に。

Classo2017教育特集・vol.1 地域資源を使って、循環型農業のモデルタウンを生徒たちと一緒に。

子どもたちが実践した研究結果が、総理大臣賞を受賞??

大自然の中でのびのびと農業をしながら、子育てをしていくという選択肢を考えた時、一から何かを生み出す力を子どもには身につけてほしい。農業を本格的に学ぶにはどうするべきかと相談に来られる移住者の方々もいらっしゃいます。そんな方にお伝えしたい、市外からも生徒自らが選び入学してくる農業高校が篠山にあります。

兵庫県立篠山東雲高等学校。農業に特化したカリキュラムで、生徒と一緒に農業に関する様々な研究や実験を行いながら学ぶ、実践教育に優れた学校です。

東雲高校では、地域ではしばしば問題になっている、竹を使った研究の結果が認められ、2015年にはなんと放置竹林の整備活動と伐採竹の再生利用の研究発表で、第4回ECO-1グランプリにおいて全国1位となる内閣総理大臣賞を総理大臣賞を受賞するほど、その研究は実践的かつ、学びにあふれたものとなっているようです。

実際に東雲高校の授業では、どのような授業が行われているのでしょうか、お話を聞きに行ってきました。

未来を支える子ども達と作る、循環型の仕組み

教師という仕事を通じて、生徒たちと同じ目線で一緒に研究をしていく。一人の先生として高校生と一緒に様々な研究を行いながら、「地域資源をもっと活用出来るモデルを」と活動を続ける菊川裕幸(きくかわひろゆき)先生。

 

 “東雲高校は、篠山で唯一の農業高校なんですよね。だからこそ、まちと一丸となって地域資源の活用や、循環型の農業をやっていける仕組み作りに向けて様々な試験的な活動ができるんです。篠山の農都政策とからめて、地域資源を使って循環型農業ができるモデルタウンにできたらとも考えているんですよ。”

普通地域では必要とされなかったり、処理に困ったりするものを「資源」と捉えてプラスに転換する。それこそが循環型の農業として、地域の人が自分たちの手で今後も守っていくことのできる農業のモデルになり得る可能性を秘めています。事実、菊川先生や生徒たちが研究した「竹チップ(竹を粉砕してチップ状にしたもの)」は雑草よけの機能を果たしたり、水素や、汚泥を入れて堆肥を生成したり、牛の餌に混ぜることで肉質を落とすことなく餌の量を軽減したりと、多岐にわたる研究結果が認められ、総理大臣賞を受賞します。

人の成長と、農業のつながり

 “「こんなことをしたらどう?」と生徒に投げると、最初はもちろんできないんですけど、経験をする度に自分で考えて主体的に動いていけるようになっていくんですよ。地域の人と接する機会も多いので、社会性も身につけていけるし、植物だけでなく自分も育てていけるところを見てきて、人の成長と農業は繋がっているなと感じるようになりました。”

特に日本の文化の根源は農業から始まっているから、農業は学問の一番はじめといえるのかもしれません。市内唯一の農業高校だからこそ、こんな肥料を使って試してみようとか、こんなやり方をやってみようと幅のきく研究や実践を経験できると菊川先生は語ります。

 “竹だって、もともと人の生活に必要だったから日本で導入されたはずなんですよね。でも今は時代が進化して、邪魔者扱いになっているでしょ?たくさんあるんだから、使える方法を考えて価値をつけてあげると資源になるんですよね。生徒達も登校中に「竹多いなあ」って感じることもあると思うんです。それをなんとかできた経験は、貴重なのではないかなと思いますね。”

チャレンジできる環境と、成果を上げる楽しみ

日本の先進的地域課題とも言える農業から、様々な新しい取り組みを行っている東雲高校。ユニークな先生やチャレンジ精神のある生徒たちの背中をバックアップしている奥田格(おくだただす)校長先生にもお話を聞いてみた。

 “東雲高校は農業高校なので、地域農業を支える人材育成を念頭に置いています。篠山市からバックアップを受けながら、生徒たちが就職するにせよ大学に進学するにせよ、地域を支える大事な人材として成長して欲しいと思っています。”

奥田先生のいる校長室は、常に開放しているそうです。生徒さんがのぞきにきたり相談しにきたりする事もあるそうで、小さな学校だからこそできる風通しの良さも魅力のひとつ。生徒たちにとっても、先生たちにとっても風通しのよいコミュニケーションができる学校でありたいなと思っているそうです。

 “特に総理大臣賞を受賞してから、生徒たちは変わったなと思います。自分たちでもできるんだという想いを持って、努力次第で上のステージに上がれるんだということ、チャレンジする事の喜びを実感してもらえた事はすごく良かったですね。”

2016年度の東雲高校の入学生は、なんと4割以上が阪神間の市外からオープンハイスクールや自分で高校を調べて入学してきたそうです。実際に高校を訪れると、生徒さんたちの意欲的な姿勢が垣間見られ、自ら何かを叶えたい、学びたいと思う生徒たちが集まっている場所だと感じる事ができます。

ポジティブな選択、活気のある学校

東雲高校にインタビューをお願いした時から、取材が終わるまでとても楽しく未来のあるお話を聞く事ができました。生徒さんたちに話を聞いても、今自分がどんなことをやっていて、どんな成果を上げたいか話をしてくれました。風通しのよい環境とチャレンジ精神のある教師陣に囲まれた学校生活はどんなものなのだろうと、想像します。

農業を通じて、自分自身を成長させていく。農業教育の最先端のひとつともいえる高校がある篠山で学ぶことは、これからの地域で生きる子どもたちにとって、とても本質的な学びを得られるのではないかと感じさせられました。

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